はじめに
サステナブルファッションやエシカルファッションの実現には、素材選びやサプライチェーンの透明性確保といった課題が伴います。近年、これらの課題を解決する手段として「テクノロジー」への注目が高まっています。3Dバーチャルサンプリング、ブロックチェーンによるトレーサビリティ、AR(拡張現実)試着など、デジタル技術はスモールブランドにとっても実践的な選択肢になってきました。本記事では、サステナブルファッション領域でどのようなテクノロジーが活用されているか、具体的な事例とともに解説します。
3Dバーチャルサンプリングと需要予測AI
企画・生産の段階で注目されているのが、3Dモデリングを使ったバーチャルサンプリングです。ファッション業界では一つの商品を市場投入するまでに複数回のサンプル製作が必要で、そのたびに素材・コスト・時間が消費されます。CLO 3D や Browzwear などのソフトウェアを活用すれば、生地の質感をデジタルスキャンしてPC上でデザイン・シミュレーションを完結できます。これにより物理サンプルの製作回数を大幅に削減でき、環境負荷の低減とリードタイム短縮を同時に実現できます。さらに、AIによる需要予測技術と組み合わせれば「必要なものを必要な数だけ作る」という過剰生産の抑制にも貢献します。
ブロックチェーンによるトレーサビリティとAR試着
テクノロジーの活用は生産現場にとどまりません。サプライチェーンの透明性を「証明」する手段として注目されているのがブロックチェーン技術です。製品ごとにIDを割り振り、綿花の収穫・紡績・縫製・輸送といった全工程の情報をブロックチェーン上に記録します。この記録は事後改ざんが技術的に極めて困難なため、ブランドが主張する「エシカルな製造背景」に客観的な裏付けを与えます。また、スマートフォンのカメラを使ったAR(拡張現実)バーチャル試着の普及により、オンライン購入時の「サイズ不一致」「イメージとの差異」を原因とする返品率の低下が期待されています。返品にともなう輸送のCO2排出量は世界規模で見ると相当な量になるため、AR試着の普及はサステナビリティへの間接的な貢献につながります。
これらのテクノロジーはかつて大企業専用の投資とみなされていましたが、クラウドベースのサービスや低価格化が進んだことで、スモールブランドでも導入可能な段階に来ています。重要なのはテクノロジーを目的化せず、「環境・人への負荷が少なく、作り手も買い手も持続できるファッション」という目標のための手段として位置づけることです。